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程なく車は、真美の団地に着いた。
『俺が祐樹抱くから、真美はおもちゃ持ってって。』
『うん、ありがとう。』
俺は、車を近くのコインパーキングに停めて、後部座席で眠る祐樹を抱え上げた。
今年で四歳に成った祐樹の体は、思ったより重かった。
真美は、祐樹を抱えるのにてこずっている俺を笑いながら見ている。
『結構、きついでしょう?特に寝たら重く成るよ、子供は(笑)』
『だな…。腰に来そうだな(笑)』
どうにか、祐樹を抱えると真美の団地までたどり着いた。
エレベーターで8階まで上がる途中、もう一度、黙って真美にキスをした。
真美が部屋のカギを開け、玄関口に荷物を置くと、俺から祐樹を取り上げて、祐樹の部屋のベッドに手慣れた仕草で寝かしつけた。
枕元に大きなおもちゃの袋も置いて、部屋の扉をそっと閉めて、ダイニングテーブルに座る俺に尋ねる。
『ビール飲む?それともこの前藤田さんに貰ったワインもあるけど…。』
『んん…ワイン飲もうか?真美も付き合えよ。』
二人でちっちゃなダイニングテーブルで差し向かいながら、ワインで乾杯した。
真美は、お気に入りのCDかけて、有り合わせのもので素早く、ハムサラダと、サラミを薄く切ったものを乗せたクラッカーチーズとチョコレートをテーブルに並べた。
『今日は、ありがとうね…。』
真美がつぶやく。
『何度も言うなよ…。こっちが幸せな時間をありがとうな…。』
俺達は、二年前に会社の近所のクレープ屋さんで働く真美と出会い、昼食の後必ず寄るその店で、冗談混じりに食事に誘い、4、5回目のデートの時に男と女の関係になった。
その時、真美は真剣には付き合え無いと、自分の身の上を洗いざらい俺に話しをした。
俺は、少しその話しに引いたものの、22才には思え無い、落ち着きと女らしさと、淑女と少女が表裏する笑顔にゾッコンに惚れて行った。
回りの友達も、次々に結婚して行く中で、俺自身『結婚』と言う現実を突き付けたりしない真美に、ある意味ズル賢い部分で安心してた様にも思う。
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