裕子との出会い

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『真理で~す!』 やけに明るい娘が浩の横に最初に座り、最後に 『裕子です。』と、俺の横に裕子が座った。 『いつもよく来られるんですか?』 と、在り来りな言葉を裕子は俺に聞いて来た。 俺は、その問い掛けには答ず 『余り見掛け無い顔だね…。』と聞き返す。 『はい…木曜と金曜の二日だけこのお店に入ってます。昼間は、普通にOLしてるんで…。』 『あっそう…。道理でなんか雰囲気違うなって思った。』 『それは、どういう意味で?野暮ったいって事ですか?』 『別に悪い意味じゃ無いよ(笑)』 少し膨れっ面の裕子を見て、俺は笑いながら答える。 隣を見ると浩が必死で真理を口説いてる。 浩は、この歳(27才)で、去年地元で小さな居酒屋をオープンさせ経営者として頑張ってる。 その店に必死になって真理を誘う声が、こちらの席まで聞こえて来て、裕子が俺にこう言った。 『片岡さんは、隣のお友達の店には行かないんですか?』 『週三で行ってるよ(笑)和食の店なんだけど、けっこうイケるんだ。』 『へぇ~私、お肉より魚の方が好きなんですよ。』 『じゃあ、今度一緒に行く?』 『本当に?!行く!行く!』 そこには、水商売のホステスの独特な駆け引きも、社交辞令も無くて、とても素直な言葉の様に俺に響いた。 『じゃあ、都合のいい日に、ここへ電話ちょうだい。』 俺は、自分の名刺裏に携帯の電話番号を書いて裕子に渡した。 その当時、まだ今の様に携帯は普及しておらず、基本料金も4万か5万したと思う。 バッテリーもショルダータイプで、連続通話も15分位で切れるしろもんだったが、当時はかなりステータスの有るアイテムでもあった。
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