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他愛の無い会話が続き、浩と康夫が酔いも有ってか、昔の些細な事で揉め出した。
俺は、二人に割って入ってなだめる。
『まあ、まあ、まあ、その話しになったらキリが無いんで、そこまで!』
すかさず義成が、隣のボックス席で接客中のママに向かって、指をバツにクロスさせる。
『ママ~!お勘定して!チェック!チェック!』
『もう、お帰り?まだ一時間も経って無いわよ。そう、お供(タクシー)呼びましょうか?』
『いや、イイよ…俺に伝票持って来て。』
どうやら、義成のおごりらしい。
浩と康夫は、お互い小言を言いながらも、チェックの済んだ後は、隣に付いた女の子をからかいながら上機嫌で席を立った。
『ありがとうございま~す!』
見送りのママやホステスの言葉に送られて、エレベーターを待ってると、その中から裕子が俺に駆け寄り、耳元に小声で囁いた。
『ありがとうございます。必ず近いうちに連絡入れますね。
もし、よければ健太さんにも…』
裕子は、一枚の紙コースターをそっと、俺の上着のポケットに差し込むと、ニッと笑って見送りの列に戻る。
『ありがとう!また来るわ!』
俺は、見送りの女の子にそう言うと、その場では、何事も無い様に振る舞って、エレベーターから降り、わざとみんなの歩く列の最後尾に位置取ってから、ポケットの中からコースターを取り出して見た。
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