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ポケットから取り出した、その紙コースターの裏側には可愛い文字で裕子の会社の電話番号と内線番号とフルネームが書かれてあり、最後に『私、店頭だから何時でも電話下さいね❤』
と、小さなハートマークが書かれてあった。
キャバクラやクラブやスナックで、女の子が名刺と個人の連絡先を教えて来る事は、よく有る事だ。
しかし、昼間の勤務先を伝えて来る女の子は、初めてだったんで、俺は『不思議な娘だなあ~』と、独り言を呟きながら、みんなの後を付いて歩いた。
時計の針は、丁度日付を変えたあたりで先頭で歩く浩が
『ラストにシメで俺の知り合いの店に行くか?』
と、みんなに聞くと隆が
『飲むとこ?食うとこ?』
と、聞き返す。
すると、浩が答えた。
『ママと女の子一人のカウンターの店で女っ気は無い寂れたスナックなんやけどカラオケも有るし、場所は大手筋のガード下。みんな家からも近いしエエやろ?』
一同賛成して、その店に向う事になった。
俺達は、タクシー二台に分譲し、その向かうタクシーの中で、俺のショルダー式の携帯電話に見慣れ無い電話番号が鳴った。
『はいッ!お電話ありがとうございます。片岡です。』
この携帯の使用代金の七割が会社持ちの営業専用電話と言う性質上、どうしても営業言葉で出てしまう。
『裕子ですけど…。』
『エッ!?裕子さん!?』
『はい…琥珀の裕子です…。』
『ああ…。さっきはどうも…。楽しませせて貰って、ありがとうね。…って、どうした?何か忘れ物でもしたっけ?』
突然の裕子の電話に面を喰らいながら答えると
『いえ…今日は、本当にありがとうございました…。浩さんのお店に行く約束忘れ無いで下さいね。』
『こんな別嬪さんとの約束、忘れる訳無いやろ(笑)必ず、近い内に連絡するよ。』
『待ってますから…。絶対ですよ。』
『わかった。』
『じゃあ、お気を付けて…おやすみなさい…。』
『うん、お疲れ様。おやすみ。』
隣の義成がニヤニヤしながら
『夜の女の子も営業大変やなあ(笑)けど、あの娘も営業かけるんやったら、勘定もった俺にせんとアカンがな(笑)まあ、俺もルミちゃんと次の金曜に同伴の約束したけど(笑)』
その時は、俺も営業熱心な娘だなと思うくらいで、別に裕子の事を気にも止めては無かった。
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