裕子との出会い

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しばらくすると、タクシーは、目的地へと到着し、俺達一行は、浩を先頭に浩の知り合いのスナックに入り、下ネタや昔話で盛り上がり、カラオケも散々歌い、お開きとなって店を出たら時計の針は丁度、午前3時を指していた。 隆があくびをしながら大きな声で 『解散~!』 と、叫ぶと、各々が握手したり、肩を抱きあったりして別れを惜しみつつも解散となった。 帰る方向が同じだったので、俺は浩とタクシーに手を挙げ乗り込んだ。 『おもろかったなあ…。』 浩が独り言の様に呟く。 『ああ…。また来年も集まれたらエエのにな…。』 『俺達の中で結婚してるんは、今は康夫と義成だけやけど、みんな嫁さん持ったら、分からんもんな…。仕事の付き合いや女房と子供持って、銭の面でも大変やろうしな…。今日でも、義成は無理しとったと思うで。』 『浩…。そんな寂しい事言うなよ…。こうして集まるなんて、祭の時と年末だけやん…。来年も再来年もずっと、続くよ。』 タクシーが先に浩の家に着いて、俺は浩に軽く手を振ると、車内は俺一人になった。 ぼーっと、車の窓から流れる景色を見ながら、これから先にある俺の未来をぼんやりと考えた。 10年先、20年先の俺は、どんな生き方してるのだろうか? 妻や子供に手を焼いて、中間管理職に日々疲れ、醜い腹を突き出した体型と薄く成った頭を気にしながら満員電車に揺られて過ごす日々…。 昔見た夢は、セピア色に色褪せて、ただ黄昏れる自分を想像すると、何故か笑いが込み上げて来た。 『お客さん、この辺でよろしいか?』 タクシーの運転手さんの言葉に我に帰り、運賃を支払いその場を降りて、見慣れた自分のワンルームへと帰って行った。
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