7982人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
入学式の三日前の日の話である。
「着いてきて」
「……は?」
家に怪獣が攻め込んできた。
間違えた。
ゴリラ(♀)が攻め込んできた。
「で?」
「だから、着いて来いって言ってんのよ」
ゴリラ(♀)ことリーシャ・グロウ様が、少々苛立ち混じりの、いつもの強気の物言いで俺の部屋の椅子に座り、俺は寝ている所を襲撃されて、ベッドの上で胡座(あぐら)をかきながら、ちょっと不機嫌ながらそこまで寝起きに弱い訳でもないので、とりあえずここに来た理由を問い掛ける。
まぁ不機嫌な理由は、寝ている時にいきなり布団を分捕られ、安眠していた俺は温かみを失い、しかも更にそこで「私に着いて来い」発言をされて、とりあえず意味が分からなかったからだ。
「……もう少し、解りやすく」
「護衛のあんたがいないお陰で今日まで買い物にも行けなかった」
「……別に、誰か使いに行かせればいいだろ」
「学校で使う物だし、自分の目で見て買いたいのよ。」
「……別に護衛は俺じゃなくてもいいだろ」
「お父様が他に護衛を付けてくれないの」
「……ここまで来るのは一人で?」
「まさか。ちゃんと馬車と護衛の人達と来たわよ。お父様の命令で」
「……そか」
『お父様の命令で』の辺りが強調されて言う辺り、またあの王様のせいか。
なんて言うか、コイツもある意味災難だな。
「……三分待ってろ」
「……外出とく」
察してくれた馬鹿女は椅子から立ち上がり、部屋の外に出て行った。
察してくれた、と言ってもただ着替えるだけだが。
最初のコメントを投稿しよう!