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「は?」
長い間黙って考えていた俺を、長い間黙って待っていてくれた馬鹿女が、俺の急な一言に疑問の言葉を返す。
考えてる間待ってくれたのは、正直びっくりだ。
気に入らなかったり放置されたりすると、すくキレるタイプだと思っていた。
案外尽くすタイプの女なのだろう。惚れてしまうやろ。
「だからお前が言った、護衛として相応しくなるって話だよ」
俺がそう言うと、目を点にして、そしてため息を吐いた。
「あんたね........なるって言ってなれるもんじゃないのよ?」
「まぁそうだが、王様がやりたい事が分かったからな。一国民として、やらないといけないしな」
「お父様の?」
眉間を寄せ、顔をしかめる馬鹿女。
自分では解らない父の考えを解ったというのに気に入らないのだろう。
「ち、因みにお父様の狙いは?」
「自分で考えろ」
「むぅっ......」
軽くだが、俺を睨んでくる。
可愛い。じゃなかった。可愛いげのない雌だ。
「なぁ」
「何よ」
「帰り、どうすんの?」
ここから城までは馬車で三時間くらいと、結構な距離だ。
[転移]を使えば、5分くらいで着くが、コイツに[転移]は無理だし、待ち合わせをしてくれているとありがたいのだが。
「行きに護衛してくれた人が、ギルドで待ってるって」
「ギルドで?なんでまた」
「さぁね。なんかユフィさんが『ギルドと騎士の差を知る良い機会』とか言ってたから、ギルドの方で何かしてるんじゃない?」
「ユフィさんが?」
何をしようとしてるんだか。いや、まぁ最近ギルドと騎士の模擬試合してないらしいし、それの事だろうけど。
まだ第二王女の護衛って仕事あるのに、そんなことするか?
いや、しそうだ。
あの人、女なのに思考が体力馬鹿で男らしい馬鹿で、脳筋で馬鹿で更には馬鹿だし。
今帰れば、巻き込まれそうだ。だがしかし。
「......」
「な、なによ!?」
馬鹿女と目が合った。
帰らなかったら、まだコイツと二人きりか。
よし、帰ろう。
ユフィさんはめんどくさいが、なんだかんだで好きだし、コイツと二人きりと比べるとユフィさんと絡む方が良い。
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