《草食動物》の異名を持つ男

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まだまだしつこく追い掛けてくるドラゴン。 逃げ足には自信があるからどうにかして振り切れるかと思っていたけど、流石にドラゴン相手には無理だった。 「めんどくせぇ!」 覚悟しろよ、このトカゲ野郎!! とかドラゴンに背を向けながら強がった言葉を口に出す勇気も無く結局心の中で思いながら、再び魔法陣を展開。 今度の魔法陣は、両手の手首に展開されてる。 これも"オリジナル"魔法。 今日、今まで魔力をかなり使ってしまった今、これを使うともう魔力がカラカラになってダルいから嫌だけど、そんな事言ってる暇じゃない! 俺は体を翻(ひるがえ)し、魔法陣がある両手をドラゴンに向けた。 自慢の逃げ足で思ったよりも距離は開いていて、落ち着きを持ちながら叫んだ。 ――俺の最高魔法だ! 喰らいやがれ! 「《緑》!!」 そう叫んで少し間が空いてから、ドラゴンの前に、縦横5mくらいの緑色で半透明の"壁"が出来た。  ギャィッ!? 突然現れた壁にドラゴンは反応する事が出来ず、頭から突進してしまった。 それとほぼ同時に、ドラゴンの左右や後ろや上に更に黄緑色で半透明の壁が出来る。 その壁が完全に出来上がると、ドラゴンを中心に正方形が作られ、ドラゴンの動きを封じた。 これが、俺の最高の魔法。"全てを阻む壁"。 半透明の緑色をしている、進行を許さない壁で、まだ一度も破られた事の無い防御魔法だ。 「暫(しばら)くそこでおねんねしてなぁ!」 頭から衝突して脳震盪(のうしんとう)を起こしたからか、グッタリとしているドラゴンに捨てゼリフを吐いて、その場を去った。 この森を抜けたのは、それから1時間後の話だった。
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