今日もどこかの片隅で

突然のドキドキ

その日は、とてもガヤガヤしていた。

人気バンド「Ｇａｎａｃｈｅ」のライブは、今日も大盛況のうちに終わった。

打ち上げは、いつも以上に盛り上がっていた。

新メンバーのYuka(ﾕｶ)は、目の前の料理に手も付けずに、ただボーッとしていた。

「Yukaちゃん？」

ボーカルのMica(ﾐｶ)は、心配そうに声をかけてきた。

『え？いや、大丈夫…』

とは、答えつつも…Yukaはただボーッとしていた。

「え？食べへんの？」

そう言って、いきなりプロデューサーのAki-Bu(ｱｷﾌﾞｰ)がYukaの皿をぶん取った。

「あっ！何すんの！」

MicaがAki-Buから奪い返す。

「Yukaちゃん、はい。」

『あ、ありがとう』

Yukaは、口をあんぐりと…それこそ、虫が入りそうな程度に開けたままずっとどこかを見ていた。

その視線の先には、Ｇａｎａｃｈｅがフィーチャリングしているラッパー、Gal-O(ｷﾞｬﾙｵ)が楽しそうにAki-Buと話していた。

「(まさか…)」

その夜の打ち上げ、終始Yukaは食事を口にすることなく終わった。