最悪の一日

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 ここは何階だとか、ここに来てどれくらいの時間が経ったとか、どうでもいい考えだけが浮かんでは消えた。  結局は、何も考えていないんだ。  物寂しく、やけに清潔な長い廊下が続いている。  『手術中』のランプの光が消えた。   僕は立ち上がって、扉が開くのを待った。 「全力は尽くしました。しかし、残念ですが……」  僕は足元が崩れたような気がした。 「………………顔、見れますか?」 「……どうぞ、中へ」  手術台の上には、橘 恵美(たちばな めぐみ)が眠っていた。  僕の、彼女だ。
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