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彼女――恵美とは、数年前から付き合い始めた。
借金に追われる僕にとって、恵美は数少ない救いだった。
仕事先で知り合ったのがきっかけで、そのとき笑うことを忘れかけていた僕に、笑うことを思い出させてくれた存在。
仕事ばかりで、ほとんど遊びに行くこともできなかったけど、恵美は文句一つ言わずに応援してくれた。
頑張る元気と、希望をくれた。
だから、お礼がしたかった。
今日は休みをとって、どこかへ遊びに行くつもりだった。
でも……彼女は待ち合わせ場所には来れなかった。
携帯で連絡してみると、近くで着信音が聞こえた。
音を頼りに、歩くと……
そこには、全身を真っ赤に染めた恵美が倒れていた。
――連続殺人事件。
『斬り刺し魔』
そう呼ばれる、最近テレビで騒がれている事件。
標的を殺すだけでなく、死んだ後も体中を刃物で刺しまくる。
計画的ではないのに、犯人は捕まらず、メディアの注目の的になるだけだった。
テレビの中の出来事。
自分には関係ないと思っていた。
その事件の5人目の被害者。
それが、恵美だった。
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