【初日】記憶の糸

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「カズ、また明日なー!」 「おう、じゃあなー!!」 学校からの帰り道。 商店街を通り抜けていつもの十字路で勝悟と別れた後。 俺は自転車を押して家の帰路を歩いていた。 「ったく…誰だよ。俺の自転車のタイヤをパンクさせた奴は」 ご丁寧に片方では無い両方だ。 だけどこれが初めてではない。 ここ数ヶ月の間、パンクさせられた回数はこれで5回目。 しかもそれだけではない。 自分が使っている下駄箱にはインクがぶちまけられて使えない状態にされている。 他にもジャージは上下とも牛乳まみれにされたり提出物は何故か破られゴミ箱に捨てられていたり。 おまけに鞄には無くなったと思えば何ヶ所もカッターで傷がつけられていたりしかも中身もご丁寧に庭の花壇にぶちまけられたりしていたのだ。 明らかに陰湿なイジメ。 だけど和也には心辺りが無い。 それが始まったのが 今度の試合のレギュラーに選ばれた辺りからなのは解るが。 それに多いわけではないがそれなりに親友も友人も居るし先輩にも可愛がられている。 つい先程までパンクした自転車を見て勝悟が俺が嫌がらせの犯人を捕まえてボコボコにしてやるって!叫んでいたが。 「はぁ、本当に何なんだよ…あ、また赤だし。」 信号機がある歩道に着くと 信号を見て俺は再びため息をつく。 「ここの信号…一度赤になると長いんだよなぁ。なんか本当にここ数ヶ月間ツイてねぇな。なんか憑いてたりして、なんちて」 そんな1人ツッコミをしつつ 信号が変わるのジッと待つ。 青に変わることの無い信号に 時間は一刻と過ぎていくばかり。 しかしここが家へ帰るには1番の近道。 せめての信号が変わるまでの時間潰しに鞄から携帯を取り出した。 画面には新着メールの表示。 それを開けるとメールの送り主は勝悟。 そこに一台の車が俺が待つ横断歩道を通り過ぎようとした瞬間。 「「そこで誰かに背中を押された」」 そう呟いた俺と彼女の声が重なる。 「貴方の使っていたあの横断歩道と道は、商店街から離れているから運悪く人通りの少ない場所でもあった。そして唯一の目撃者である貴方を轢いた加害者も貴方を押した相手の姿を見ていない。相手には良い条件が重なるぐらい好都合だったわけね」 「じゃあ、俺が事故にあったのは前方不注意じゃなくて」 ー誰かに突き飛ばされたから?ー
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