【初日】現世

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目の前の眩しさがようやく消えて 俺は顔を上げると目の前に広がっていた光景は見慣れた場所だった。 「公園…?」 他の人から見たらどう見ても極一般的な普通の公園。 だけど俺にしたら此処はただの公園では無い。 ここは小さい頃から勝悟とサッカーの練習をしていた場所だ。 高校に入ってからは練習が忙しくて来る事は殆ど無くなったが。 「ん?」 何かが、おかしい。 身体に違和感を感じて右手を見てみると何故か見えるはずのない地面が見えている。 (何で地面が…?普通は地面なんて見え) そう言いかけて 俺は改めて自分の状況がどうであったのかを思い出した。 「って…透けてんじゃん!!せっかく現世へ戻ってきたのにいきなりゲームオーバーってそんなのアリかよ!!髭兄弟の世界1-1じゃあるまいし!!」 公園で1人で叫ぶ人物は 周りから見たら明らかに不審者だ。 「ママー、変な人居るー」 「シッ!見ちゃいけませんっ!」 そんな声も聞こえてくるが 今の彼にはそんな周りの声など聞こえてはいない。 (『現世に着いたらこれを装着しなさい』) 混乱する脳裏に蘇る謡の言葉。 同時に彼女から渡された指輪の事を思い出して慌ててポケットに手を突っ込むとコロリと指輪が落ちてくる。 「やべっ…!」 手だけでなく腕まで透けて地面が見えた来た事に危機感を感じて急いで指輪を拾い装着する。 その瞬間 透けていた手や腕が元に戻っていくのが解った。 「セーフ、助かったぁ…」 力が抜ける様にうなだれた俺に 追い撃ちをかけるかの様に聞こえてきたのは 『本当にギリギリセーフだったわね。あと少し遅かったら、完全にゲームオーバーだったわよ』
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