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いきなり聞こえてきた謡の声に
俺は驚きを隠せず辺りを見渡す。
公園には冬休みなのか子供が数人遊んでいるのと散歩やジョギングしている人が居るだけで謡の姿は何処にも無い。
「あんな派手な姿なら直ぐに解るもんなんだけどな」
(てか、何で間に居る謡の声が此処で聞こえるんだよ!?)
そんな謎の幻聴に頭を悩ませていると
『おーい!聞こえるー?ここよ、こーこー!』
謡の声がまた聞こえてきた。
だけど先刻よりかは凄く近くでよりリアルに聞こえてくる。
「……………。」
(まさか…これを着けろって言ったのは)
その謎を確かめる様に指輪に耳を傾けてみると明らかに謡の声がよりクリアに響いてきた。
『あ、やっと気づいたー?これね、実は通信機の機能がついてんのよねー。し・か・も!私にはアンタの様子までこちらには影像として流れちゃうシロモノなのよー!!ね?ね?あたしって凄くなーい?』
「なのよーでも凄くなーいじゃねぇぇぇぇぇぇっ!!」
もはやツッコミ所が多すぎて
そう叫ばずにはいられなかった。
急に立ち上がって叫び出した俺に周りからの視線が一斉に集中する。
その反応はヒソヒソと話していたり
こちらを不審そうに見てたり
端かも関わりたくないのか目を反らしその場を後にする人も。
(まずい、非常にこれはまずい)
このままでは
本当に不審者に間違えられて警察のお世話になりかねない。
「と、次の舞台の台詞はこんな感じで良いのか?うーん」
とっさに思いついたそんな独り言を言いながらその場でストレッチをする。
不審そうに見ていた人は
劇団員か舞台やってる人思ったのか「舞台、頑張ってね」と俺に一言をかけて立ち去っていった。
不審そうに見ていた人達もそれが解ると次々とその場を後にする。
人が居なくなったのを確認し
俺は座ると小声で指輪に話しかけ始めた。
「って、何で最初にくれた時に通信機能がついてるって教えてくれなかったんだよ」
『だってー、最初にそんなネタバレしちゃったらつまんないじゃなーい!そんなの私のポリシーに反するぅー』
(…何、コイツ。最初に会った時より明らかにキャラ変わりだろ)
そんな俺の心の声に
謡はあたかも気にする事なくあっけらかんと
『まぁまぁ、気にしたら負けよ。いちいち気にしてたら将来ハゲるわよー?』
「いや、お前はとにかくその言動を何とかしろ」
これぐらいは言わせてもらおう。
言っても罰は当たらないはず。
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