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そんな思いに浸っていると
まるで現実を突きつけるかの如く
『まぁ、まずはそこから移動するなり何とかしなさいよー?いつまでも此処に居たら今度こそ本当に不審者として通報されても知らないわよー?』
謡の声に俺はハッとする。
そしてある疑問にも気づいた。
「っておい謡!!俺、何も持ってねーぞ!これからどうしろってんだ!!」
そうだ。
この身体は俺の身体じゃない。
あくまで借り物の身体。
誰なのかも解らない見知らぬ身体。
おまけに貴重品すら持っていないのだ。
『大丈夫だって!何とかなるっしょっ!じゃあがんばってねーん!』
それを最後に謡からの通信は完全に途絶えた。
どんなに問いかけても謡からの返事は一切返ってこない。
(言うだけ言いたい事言って切りやがったよ。あの女)
「あーあ、戻ってこれた瞬間今度はホームレスかよ」
もはや諦めるしかないと。
嫌でも悟った俺はガックリとうなだれた。
この寒空に時期はまだ冬。
しかも今日の天気は夕方には雪が降りそうな天気だ。
「…コート着ているだけでもマシだけどな」
身体を貸してくれた優しい主は
冬の格好であった為凍える事はまずは避けられた。
しかし問題はここからだ。
2月と言っても夜になれば気温はマイナスを記録する事も珍しくない。
特に真夜中には
気温がどれだけ下がるかと想像しただけで恐ろしい。
いくら何としてでもそれは絶対に避けなければ。
(てか真冬に野宿は絶対に無理!
死ぬ!無理ったら無理!!)
しかし、いつまでも此処に居ても何も解決はしない。
「ああ!もう悩んでたって仕方ねぇ!!まずはここから移動だっ!移動移動っ!!」
「キャアッ!!」
俺が叫びながら立ち上がったのと同時に聞こえてきたのは女性の悲鳴だった。
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