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『うんうん。それだけ言い返せるなら大丈夫みたいね。どうだった?アラタとして家族と過ごした感想は』
「…不思議な感覚だった。」
同じなのに何かが違う。
身体がアラタの身体なんだから他人であるのは当然の事だと割り切っていたが。
一緒に夕食をして
昔の思い出話に花を咲かせた。
だけど、そこに居た皆の表情は何も変わらないくらいとても明るくて
そこに俺が居なくてもきっと大丈夫だろうと思っていた。
だけど時折。
母さんの目に涙が浮かんでいたのが何より印象に残っている。
(母さん……)
今でも、こうして部屋に居ても
まだ脳裏に蘇るぐらいだ。
『どうしたー?急に黙りこんじゃって』
「何でもない…」
『ならいいけどー』
どうやら謡は今の俺の気持ちは読んでなかった様だ。
わざとなのか。
それともあえてなのかそれは謡本人にしか解らないけど
今の俺にはとても有り難かった。
『目撃者現れたのね。良かったじゃない。アンタの不注意による事故として処理されなくて』
「あぁ…」
"兄貴と同じ服装だった"
梓の教えてくれた言葉が
今でも耳にこびりついている。
そして同時に
脳裏に浮かんでは消えるのが
よく見知った顔。
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