【初日】幸せのひと時

6/6
前へ
/166ページ
次へ
商店街から離れた人通りが少ない道。 数日前、此処で事故が起きた。 事故当初は普段は人通りが少ないこの道が騒然となったのは言うまでもなく。 チカ、チカと。 横断歩道の信号が点滅して赤に変わる。 街灯に照らされる看板には 数日前の事故の目撃情報提供を求める看板。 そこに置かれているのは仏花。 所謂、仏壇に供える花だ。 「……任務、完了」 その花を置いた人影は そう呟くと新着メールを告げるメロディが闇に響く。 差出人名は 神・ホープ様 『任務が完了したようだな。貴殿のこれまでの働きに我は満足だ。感謝する。』 そんな文字に 人影の携帯を持つ手が小刻みに震える。 「ホープ様の有り難き言葉…!これまでにない有り難き幸せ…!!」 まるで崇拝するように高らかに叫ぶ人影。 遠くから犬の吠える声が聞こえたが幸せに満ちている今の人影には犬の鳴き声などどうでも良い。 「ホープ様、僕はあなたの為なら地獄に落ちても構いません。あなたの為なら…」 「そうかそうか、ホープ様の為なら死ぬ覚悟もあるわけだな?なら、そのホープ様からの有り難い言葉だ」 急に現れた人影に その人影が振り向くと彼の手に見える画面の文字に目を見開いた。 神・ホープ この者は用済みだ。 我が命により始末せよ。 画面にはその人影の画像も添付されていた。 「嘘だ…嘘だ嘘だ!ホープ様がそんな事言うはずがない!」 そう叫ぶ人影に 新着メールを告げるメロディが響き渡る。 そのメール内容を見た瞬間。 人影の顔からは絶望が見えた。 「ホープ様の為に死ね。じゃあな、用済みさん」 響き渡る絶望的悲鳴と 何かを一斉に殴りつける音。 その中で犬の吠える声だけが 無常にも響き続けていた。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加