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「チッ……まだ生きてやがるのか……放っといても死ぬだろうが念のため、とどめでもさしておくか……」
男はエルンの体をどこかに移動させると、エルンの持っていた剣を取り、クレスの首を刈り取ろうとしたその時、その剣が何かによって弾かれた。
「おいおい、それ以上の勝手はさせねぇぞ」
「き、貴様は……『刃雷』ギルス・エルナン!」
急に現れた黒い髪をくくっている男、ギルス・エルナンがスランの目の前に立ち、魔宝玉の埋め込まれた槍を構えた。
「退け、さもなくばお前の命は無いぞ」
「シェリル・ユエンまで持ち出すとは……本気か……なら分かった。俺はいったん退いてやる。そのガキに伝えとけ。女を返して欲しければおまえ一人で三日後の正午にサンスルス遺跡に来いってな!」
男は高らかに笑いながらどこかへと移動していった。
「……さて、あとはこいつだな……」
ギルスはクレスの方に近づくと、傷口に手をかざした。
「俺の魔力(いのち)も残り少ない。俺にはできなかったことをお前達、次の世代に託すぜ。『治癒波動』!」
ギルスの手が光り輝き、クレスの胸の傷が塞がっていく。
傷が完全に塞がると、ギルスはゆっくりと立ち上がり、クレスを背負って歩き出した。
「あの時に比べて重くなったなぁ……お前も……息子も旅に出るしな……大きく育ってくれて本当に……親として嬉しいぜ……」
ギルスは空を見上げると、涙を流し歩き出した。
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