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旅に出る。そう書き置きをしてお兄ちゃんは家を出ていった。
その後、遺跡から魔物がいなくなったという話を聞いて一週間。まだお兄ちゃんは帰ってこない。
隣の家のユリンさんも一緒にいなくなったらしく、料理のできないクレスに料理を作ってあげている。
「はぁ、お兄ちゃん達今どこにいるんだろ……」
「寂しがるなよ。エルンちゃんには俺がい……「五月蝿い!『フレイム』!」
変に格好つけたクレスを炎魔法で燃やして黙らせる。
(一瞬でもこいつを格好いいって思った自分が情けない……)
私はがっくりと肩を落とし、クレスが格好良く見えたあの時を思い出す。
「エルンちゃんは悪くない!エルンちゃんをいじめるな!」
「このクソ野郎……俺のエルンちゃんを……いや、女の子を殴ろうとするなんてお前には良心というものが無いのかぁっ!」
「エルンちゃん。このクソ野郎は俺に任せて先に行っててくれ」
「二人ともいなくなったらみんなが心配するだろ?」
嘘をつくのが苦手なクレスだからこそわかる。この言葉は偽りなんかじゃなく、本心からだってことは……
でも、今はただのストーカーまがい。もうちょっと私の事を分かってくれれば、私の気持ちも変わるかもしれないのにバカの一つ覚えみたいに求愛し続けて……
今はただ鬱陶しいだけ。あの瞬間(とき)のときめきを返してほしいくらいに……
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