三河殿接待

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久々にゆるりと休息らしい安土登城を命じられていた明智光秀達一行は三河衆が美濃に入った頃天守の間にて信長に謁見した。 『日州。三河殿を接待いたせ』 『ははっ。』 『我が信長が天下を知る程の最高の接待を致せ』 信長は上機嫌であった。 天守の間から階段を降りる光秀の心境は複雑に曇っている…。 (上様は……お忘れなのであろうか?……。) 光秀の頭部には痛々しいアザが未だ癒えてない。 武田攻めがほぼ完了した今からちょうど一月程前……。 甲州諏訪の陣所にて光秀にとって悪夢の様な事件が起きた。 『まこと…我らの骨折りのかいあってこの度、甲信両国の平定あいなり申してございます』 光秀としてはようやく担当の丹波平定が終わりその後、総大将織田信忠(オダノブタダ=ノブナガの嫡男)に従い武田攻めに従軍して来たのである。 当然武田攻めが終わりがけた頃に悠々と視察にやって来た信長から労いの言葉が貰えると思っていた。 その一言が信長の癇に障った。 『我に何の功あってその様な大言がでるっ』 信長は光秀の頭を何度も柱に打ち付けた。 多くの家臣の面前で……。 (武門の面目塵程もあらず…) 光秀はただ平伏するしかなかった。
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