回想~懺悔~

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『…(俺は、いつからここにいるんだ…)』 俺は、何百年も前からここにいる。 『…(一生このままなのか)』 俺は、数百年前、ある罪を犯した。 仮面を盗んだのだ。 初めてその仮面を見た時、別段価値のある代物には見えなかった。 では何故盗んだのか…。 俺にも分からない。 強いて言えば、その仮面の魔力に惹かれたのだ。 馬鹿げた話に聞こえるだろうが、その言葉がしっくりくる。 その仮面を見た時、 『この仮面を俺のものにしなければ…』 そう感じたのだ。 俺は、夜を待って、仮面が置いてある博物館に忍び込んだ。 万事上手く行った。 俺はその仮面を手に入れた。 しかし、簡単には終わらなかった。 俺は、古の呪いにかけられたのだ。 そして、試練を与えられた。 それは、いたって簡単だった。 “ここに来る100人の旅人の願いを叶える” それだけ。 数百年の間、実に多くの旅人がここを訪れた。 俺は、そいつ等の願いを叶え続けた。 地位を望む者には何者にも劣らぬ地位を。 金を望む者には、両の手で有り余る金を。 99人。 後1人で俺は解放される。 しかし、その後1人がいっこうに現れない。 『…(もしかして、これも呪いなのか?)』 俺は、数百年の間、何度も死を望んだ。 死こそが、絶対的な自由だと思っていた。 だが、俺には、自分で死ぬことすら出来なかった。 『…(何故あんな事をしてしまったんだ)』 今更過去の自分を悔いた所で、もう遅い。 過ぎ去った時は、過ぎ去った旅人同様、二度と戻らない。
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