736人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうして私なんだ」
Aは笑いながら聞いた。
「別に誰でも良かった」
Zの声は機械のようにZの考えだけを伝える。
「たまたまあなたの事があまり好きじゃなかったからあなたにした」
そう答えるZの顔を見てAは笑うのを止めた。
Zの顔があまりにも無表情だったからだ。
殺人行為への後悔や反省の色はおろか、感情というものがそこには欠如していた。
自分は小説のせいで殺された。
そう思うと、Aは言い様のない虚無感に襲われた。
Aはその場に泣き崩れた。
Zは相変わらずの無表情でそんなAを見ていた。
Aは泣きながら言った。
「こんな事なら『小説はフィクションなんだからそのつもりで読め』って生きてるうちに言ってやれば良かった」
『小説はフィクションなんだから……』
そう、この物語もまたフィクションである。
Fin.
最初のコメントを投稿しよう!