殺人者と泥棒

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【殺人者】 入浴中に歯を磨く。 それが青木のいつものやり方だった。 湯船に浸かっている間は特にやるべき事もない。それならばその時間を利用しない手はない。 そういう合理的な考え方を、青木はよくした。 口の中の歯磨き粉を一度吐き出し、また歯ブラシを口に突っ込む。 青木は一日の疲れを落としながら自分の歯を磨くこの時間が好きなはずだった。 しかし、今日は胸の奥に何かが詰まっているような気分で、歯磨き粉の味がやけに苦く感じられた。 いくら歯を磨いても、胸に詰まった何かはなくならない。 今の青木の心情を表すかのように風呂場は暗かった。 比喩ではなく、本当に暗い。 風呂場の電気はついていなかった。 青木が合理的に考え、あえて電気を消していたのだ。
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