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【泥棒】
玄関に足を踏み入れた時、赤木は嫌な予感がした。
泥棒としての勘、とでもいうべきものが頭の中で警鐘をならしている。
この嫌な予感の正体は何なのか。
赤木は注意深く周りを観察する。
“靴だ”
と赤木が気付くのに時間はかからなかった。
玄関には一足の革靴が揃えられていた。
靴があるという事は誰かが居る可能性がある。
しかし、と赤木は考える。
今、この部屋の住人は警備の仕事で外に出ているはずなのだ。
帰ってくるのが翌朝の5時という事まで調べている。
たった一足の靴でこのチャンスを棒に振るわけにはいかない。
どの靴を履こうか迷って出しっぱなしにしてしまったのだろう。
きっとそうに違いない、と赤木は自分自身に言い聞かせる。
それに目の前に続く暗い廊下からは全く人の気配が感じられない。
問題なしだ。
赤木は靴を脱ぎ、廊下を進む。
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