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【殺人者】
リビングの暗闇の中から懐中電灯の光が青木を照らした。
眩しさで前が見えない。
青木は手を伸ばし、リビングの明かりをつけた。
部屋中の明かりを消したままにしておきたかったのだが、やむを得ない。
目の前で男が腰を抜かしていた。
青木はその男を観察する。
相手がどんな人間なのかをまず知らなくてはならない。
直感的にそう感じた。
相手の背丈や武器の有無、そういったものを知る事が今この場では重要なのだ。
男は床に座った状態ではあるものの、手足の長さから想像するに身長はかなり高い。
整髪料で逆立てられた髪の毛がまるで青木を威嚇するかのようだ。
闇に紛れる為なのか、全身真っ黒な服に身を包んでいる。
手には懐中電灯。
武器を隠し持っているとすれば真っ黒な上着の中だろうか。
表情から察するに男は状況が飲み込めていない。
今しかない。
青木はそう判断した。
もし相手が武器を持っていたとしても、今なら勝ち目がある。
青木の視線と男の視線が空中で音もなくぶつかった。
フローリングの床を蹴り、男に飛び掛かる。
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