殺人者と泥棒

8/17
前へ
/78ページ
次へ
【殺人者】 リビングの暗闇の中から懐中電灯の光が青木を照らした。 眩しさで前が見えない。 青木は手を伸ばし、リビングの明かりをつけた。 部屋中の明かりを消したままにしておきたかったのだが、やむを得ない。 目の前で男が腰を抜かしていた。 青木はその男を観察する。 相手がどんな人間なのかをまず知らなくてはならない。 直感的にそう感じた。 相手の背丈や武器の有無、そういったものを知る事が今この場では重要なのだ。 男は床に座った状態ではあるものの、手足の長さから想像するに身長はかなり高い。 整髪料で逆立てられた髪の毛がまるで青木を威嚇するかのようだ。 闇に紛れる為なのか、全身真っ黒な服に身を包んでいる。 手には懐中電灯。 武器を隠し持っているとすれば真っ黒な上着の中だろうか。 表情から察するに男は状況が飲み込めていない。 今しかない。 青木はそう判断した。 もし相手が武器を持っていたとしても、今なら勝ち目がある。 青木の視線と男の視線が空中で音もなくぶつかった。 フローリングの床を蹴り、男に飛び掛かる。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加