殺人者と泥棒

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【殺人者】 初撃を与える直前に相手が腕を構えてガードするのが見えた。 青木は渾身の力を込めて、ちょうどアメリカンフットボールの選手が敵チームの選手にタックルするように突っ込んだ。 相手のガードが崩れる。 その隙を逃さずに、青木はすぐに立ち上がり、ノーガードの顔面を目掛けて右足を振る。 しかし、右足は虚空を切り裂いただけだった。 相手が寸前で首を後ろに曲げて青木の右足を躱したのだ。 青木の脳内で警鐘が鳴り出す。 速く右足を戻さないとまずい事になる。頭ではそう考えていても体は言うことを聞かない。 相手は両手を床に着き、下半身を押し出すように青木の方に滑らせ、その勢いで青木の軸足を蹴った。 青木の体が宙に浮き、ゆっくりと回転しながら重力の法則にしたがい落下する。 軸足を蹴られた。 青木がそれを理解した時には青木の体はもう床に沈んでいた。 上から見下ろす相手の顔が視界に入る。相手はもう既に立ち上がっているのだ。 そして、相手は青木に銃を向けていた。 やはり武器をもっていたのか。 青木はそう考えると共に自問自答する。 今の状況に最も合う四字熟語は? ――形勢逆転だ。
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