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手の甲に、痺れと痛みを同時に感じる。
熊男はアスファルトにうずくまり、サングラス男と男性は口をぽかんと開けてこちらを見ている。
「上出来じゃん」
彼女が頭の中で言う。
相川明宏は自分が熊男に殴りかかった事が信じられない。
自分にそんな勇気があるとは思えなかった。
手の痛みさえなければ、これは夢の中での出来事だと判断しているところだ。
熊男がゆっくりと立ち上がった。
その憤怒の表情に相川明宏はたじろぐ。
「どうやら、兄ちゃんも内臓を売りたいみたいだな」
とてもジョークを言っているようには見えない。
「あわわわ……」
何故か男性がうろたえている。
突然、後ろからサングラス男に羽交い締めにされた。
しまった、と思うが、もう遅い。
見た目は中学生なのに、腕力はかなり強い。
完全に動きを封じられた。
「さて、どの臓器から戴こうかな?」
熊男の持つナイフの刃が、月明かりを反射して妖しく光る。
「てめえ、ただじゃおかねえぞ」
耳元でサングラス男の荒い言葉が聞こえる。
熊男がナイフを首もとに押し付けてきた。
「ショータイムだ」
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