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相川明宏は見覚えのない部屋の中で立っている。
学生の勉強部屋のような、そんな空間だ。
広いな。
まず感じたのは、その部屋の広さ。いや、巨大さだった。
自分が、童話に登場する小人達の仲間入りを果たしたのではないか、と疑いたくなる程の巨大さだ。
部屋の景色を眺め、自分が広大な机の上に立っている事に気が付く。
あと何歩か前に進むと“崖から”落ちてしまいそうな、そんな位置に立っている。
“地面”には規則正しい升目の模様がある。
方眼紙のような、升目だ。
恐る恐る、机の崖に近づき下を覗く。
落下すれば、確実に身体が潰れ、痛みなど感じる前に死んでしまいそうな高さがあり、恐怖を覚える。
そんな気の遠くなるような距離を隔てて、フローリングの、これまた広大な床が見える。
やはり、ここは巨大な部屋の中なのだ。
崖から離れ、前方に視線を向ける。
遥か遠くに本棚が見えた。
綺麗に並んだ本の一つ一つが、高層ビルを5棟程束ねたような大きさを持っている。
その中の一つの背表紙に目が留まった。
ラッシュライフ 伊坂幸太郎
自分も読んだ事のある小説だ。
複数の主人公達がそれぞれのストーリーを歩み、物語の中盤でそれらのストーリーが複雑に絡み合い、最後にはまたそれぞれのストーリーへと戻っていく。
そんな話だったはずだ。
この部屋の主も、伊坂幸太郎をよく読むのだろうか?
相川明宏はそんな事を考える。
相変わらず、自分のいるこの空間が何なのかはわからない。
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