小説はフィクションなんだから

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Zは殺意を行動に移そうとはしなかった。 殺人者となって刑務所に入れられるのはまっぴらごめんだったからだ。 そんなZの心の中で殺意はだんだんと膨れ上がる。 Aと顔を合わせる度に、Zは殺意を鎮めなければならなくなった。 しかし、蛇口に繋いだ水風船のように殺意は急速に膨張していく。 AがBへの好意を我慢したように、BがCへの好意を我慢したように、ZもAへの殺意を我慢しようとした。 だが、好意と殺意では蛇口から出る水の量が全く違ったようだ。 ついにZはAを殺してしまった。 とてもあっさりと。 まるで小説の中の出来事のように。
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