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「Aさん、この訳のわかんねえ空間について何かわかったかい?」
赤木が尋ね、口論が再び終わる。
「わかったという訳ではありませんが、遠くからこのモニュメントを眺めているうちに仮説を一つばかり思い付きました」
「仮説か。聞かせてくれよ」
赤木が少年のように目を輝かせる。
「その前にまず、相川さん、あなた生きてますか?」
普通なら戸惑う質問だが、二度目となるとそうでもない。
あ、またか。またその質問ですか。そんな感じだ。
「さっき赤木さんにも聞かれましたけど、もちろん、生きてますよ」
Aはゆっくりと頷く。
そう答えるのを予想してましたよ、と言われたかのような気分になる。
「なるほど。それでは私の仮説の説明に入りましょうか。まず、この空間には現在4人の人間がいます。そして、そのうち2人が死人です」
「“2人”ですか?」
思わず声が出る。
自分の知る限りでは、死人は青木だけのはずだ。それも真偽は定かでない。
「えぇ、私も死んでますから」
Aが表情を変えずに淡々と言う。
“死人に口なし”
あのことわざはどうなったのだ。
これじゃあ“死人に口あり”じゃないか。
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