エイラⅠ

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最初にその異変に気付いたのは赤木だった。 「どうなってるんだよ、それ」 赤木の指はAをさしている。 「何だそれは」 青木も異変に気付く。 もちろん、相川明宏の目もその異変を捉えていた。 そして、3人に少し遅れてA自身も異変に気付く。 「これはどういう事でしょうか?」 自分の身に異変が起きているにも拘わらず、その口調はやはり穏やかだ。 どういう事でしょうか? それは3人にもわからない。 わかる事は“Aの体が透けてきた”という事だけだ。 「透けて……きてますね」 相川明宏は辛うじてそう答える。 赤木が目を充血させ、「何なんだよ」と喚いているのが聞こえる。 青木が顔を真っ青に染め、呆然としているのが見える。 モニュメントの中心を貫く柱は相変わらずそこにある。 これは空想なのだ。 そう主張するかのように。 「冷静に考えましょう」 Aがゆっくりと言う。 その間にもAの体は徐々に薄れていく。 「何でそんなに落ち着いているんだよ」 赤木が尋ねる。 Aが微かに笑う。 「実を言うと、もう大体わかってるんです」 「何が?」 「私の体に起こっている、この異変についてです」 Aの言う事には驚かされるばかりだ。 あなたはどうして何でもわかるんですか? そんな相川明宏の気持ちを代弁するように、「どういう事だ?」と赤木が言う。
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