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生暖かな風の吹く真夜中。俺の影が、落ちる。
幾羽もの鳥が颯爽と星空に羽ばたいていくのを静かに見送った。
今宵もまた、こうして空を見上げて代わりもしない世界を嘲笑うことしかできない自分。
この広い世界で、俺は無力でしかない。そんな概念を捨て去りたくてここに集ったのに。
なかなか変わる事のない反抗的な世界に俺は少し、敵対心を抱いた。
ここは寂れた街の廃墟。
「…ぶ!!薮ー!」
ふと、基地の中から声が聞こえる。それに答えようと踵を返した。
くるりと回った俺の足元で、先程鳥が散らした羽が、惨めに舞って落ちた。
…あぁ、虚しい。
主を失った羽は美しく羽ばたくことさえ、できないなんて。
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