世界

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 そう、術式は止まってはいなかったのだ。  八人はそれを止めようと魔力を注ぎ込むが、最終段階に入ったそれは止まらない。  術式の進行を止められない。そのことに焦りながらも八人は思考を巡りに巡らせた。  そんな中、ある一つのことを思いついた。  その一抹の光に希望を託し、彼らは残された魔力を全て注ぎ込んだ。  暫くして、揺れは収まった。  港町を襲った津波も、村を襲った嵐も、山を焼いた落雷も全てが消え去っていた。  それに人々は恐る恐る外へと踏み出した。  完璧な静寂の中、突如、至る所で大地が割れ始めた。  また地震かと人々の顔は青ざめたが、それは違った。  それは大地の底まで割る地割れだった。  国境線を走る黒い線は、ついに世界を11に分断してしまった。  その頃、虚無の城では八人の賢者が倒れていた。  この地割れは彼らがおこしたものだった。  彼らは最後の力を振り絞り、世界を消す術式を、書き換えたのだ、分断する術式へと。  死力を尽くした八人の体は塵となって消えていく。  そしてその後には、またあの透明な珠が浮いていた。  ふわふわと大気をさまよっていたが、それらは一カ所に集まると、 眩い閃光と共に消え去った。  人々は自分達の国が切り離されていくことを嘆きながらも、最悪の事態から人々を救いだした十人を崇め、褒め称えた。  人々は天に昇った彼らの清らかな魂を尊敬と感謝の念を込め、こう呼ぶ。  『完璧な者達(オーブ)』と。  だが、人々は知らない。  十の珠は世界に散らばったことを。  そして、あるものを創り出していたことを。  この世に絶対などない。  何一つとして唯一の存在にはなれない。   だが、いずれ、虚無が蘇る時が来るだろう。  我々はなんとしても阻止しなければならない。  我らが後継者となるべき者達を導き、また世界を繋げる。  それが我々に残された使命。  だが、それはまだ先の話。  疲れた、それまで眠るとしよう。  ただ、扉が開けられる、その日まで。  
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