世界

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 この世に絶対などない。  全てがある一定のバランスを保っている。  強い力が生まれれば、すぐさまそれと対抗する力が生まれ、逆に弱い力が生まれればそれと同等の力が生まれる。  これが真実。これが理(ことわり)  この世界もまたそうだった。  円形をしたこの世界はとある11人によって治められていた。  それは賢者と呼ばれる者達。  奇跡の術である『魔術』を極め、常人ならば見ることすら叶わない、遥か高みに君臨する、神にも等しい者達。  11人は初め、協力して世界を治めていた。  だが、いつしか円形のこの世界を一人一人が得意とする属性の色を元に11に分けられ、治められるようになった。  赤、青、黄、緑、空、茶、灰、紫、黒、白、そして無。  彼らは共に不可侵を約束し、別れていった。  それから時は流れ、十年後。  世界の外周を治めていた十人は、ある日、虚無の賢者が治める中心から、なにやら不穏な魔力を感じ取った。  危険を察知した十人はすぐさま支度を整え、虚無の賢者がいる城へと急いだ。  十人は中心へたどり着く最中、信じられない光景を目の当たりにした。  山ほどもある津波が街を飲み込み、巨大な嵐は村を吹き飛ばし、無数の落雷が山を焼き払う。  それは自然には起こり得ない大災害だった。  より危機感を募らせた十人は城へと急いだ。  十人が虚無の住む城にたどり着いた頃には、道中の戦闘で全員の体はもうボロボロだった。  それでも重い体に鞭を打ち、十人は虚無の賢者のいる部屋へと踏み込んでいく。  城内の残党を排除しながら十人は目的の部屋にたどり着いた。  巨大な扉を押し開き、中へと体を滑り込ませる。  部屋に入った十人は全員が全員、驚愕した。  そこに虚無の賢者がいたからではない。  彼らが驚いたのはその足下にある巨大な魔法陣。 その術式の名は『空間回帰』  それは、世界を崩壊させるものだった。  すぐにそれを理解した十人はそれぞれの武器を取り出し、虚無に飛びかかった。  激戦の末、二人を犠牲に、彼らはなんとか虚無の賢者を討ち取った。  息を引き取った三人の体は崩れ去り、その中心にあった透明な珠が天へと昇っていく。  八人はそれを見届け、戦いの終わりを確信した、その時だった。  彼らの足下が、城が、いや、世界そのものが揺れ始めた。  
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