第1話 市ノ瀬リナ

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抑揚を付けて情緒たっぷりに話された半生に、俺は完全に引き込まれた。 壮絶な人生を過ごしてなお、それをいい教訓になったとばかりに明るく話すことが出来るなんて、強い人だと思った。 まあ、正直、『もっと自分を大切にしろよ!』と説教したい衝動に駆られたが、ずっと一方的に話してくるあたり、多分リナは説教なんて求めてない。 話を聴いてもらって、共感してもらいたいのだろうと推測できる。だから俺は文句も抗議も説教も言わず、素直に共感することにした。 「そっか……それば辛かっただろうな。リナは頑張ったんだな」 「え……?」 伏し目がちだったリナは 顔を上げて一瞬驚いた表情。 「……引かないの?」 「いや、引かないよ。むしろすごいと思うよ。たくさん辛いことを乗り越えたから、今のリナがあるんじゃないかって思うよ」 「ホントに?」 「ホントに。俺は、リナが自分のことを話してくれて嬉しいよ」 そう応えると、リナはどこか満足したような笑みを浮かべてくれた。
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