第1話 市ノ瀬リナ

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「うん、ありがとう、シュン」 リナははにかんで俯き、コーヒーカップに手を沿える。 リナの声は不思議だ。 透き通るような声。 名前を呼ばれるたびに嬉しくなる。 「あのね。私も、これまでのことは神様が与えた試練なんだった思うの」 「試練?」 「そう。辛いことを乗り越えて人は成長するし、そこで掴んだ幸せがより幸せに感じるんだと思うの」 一拍置いて、顔を上げた。 強い意思のある、真っ直ぐな眼。 リナは息を吸い込んで、言った。 「まるでケータイ小説みたいに」 ケータイ小説? 読んだことないが、なんか恋人が死んだりするやつだったかな? 「そっか……前向きなんだな、リナは」
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