0人が本棚に入れています
本棚に追加
身を刺すような寒さの中、降り積もった雪を踏み鳴らしながら人々は歩いていく。
コートの襟を立て腕を組み、白い息を吐きながら足早に通り過ぎていく。
その様子を、皐月は通り沿いのカフェの店内から、ガラス越しにぼんやりと見つめていた。
「寒そうだなぁ」と小さく呟き、目の前に置かれたコーヒーにミルクとシロップ、砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる。
ミルクの白が渦を巻いて全体に広がる様を見ながら、ため息をつきスプーンを置いた。
ここのカフェは皐月の行き着けのお店で、毎日仕事帰りに寄ってコーヒーと紅茶のシフォンケーキのセットを注文する。
焼きたてのケーキは格別美味しいと評判も良く、休日は行列が出来るほどのお店だ。
しかし現時刻は平日の21:40。
そんなにお客は入っておらず、皐月にとっては至福のひとときである。
コーヒーをひと口すすり、ケーキにフォークを入れ口に運ぶと、ほんのりと紅茶の香りが鼻をかすめた。
やっとまた今日も、長い1日が終わったのだ。
皐月はここでようやく、そう感じることができた。
最初のコメントを投稿しよう!