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      身を刺すような寒さの中、降り積もった雪を踏み鳴らしながら人々は歩いていく。 コートの襟を立て腕を組み、白い息を吐きながら足早に通り過ぎていく。 その様子を、皐月は通り沿いのカフェの店内から、ガラス越しにぼんやりと見つめていた。 「寒そうだなぁ」と小さく呟き、目の前に置かれたコーヒーにミルクとシロップ、砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる。 ミルクの白が渦を巻いて全体に広がる様を見ながら、ため息をつきスプーンを置いた。 ここのカフェは皐月の行き着けのお店で、毎日仕事帰りに寄ってコーヒーと紅茶のシフォンケーキのセットを注文する。 焼きたてのケーキは格別美味しいと評判も良く、休日は行列が出来るほどのお店だ。 しかし現時刻は平日の21:40。 そんなにお客は入っておらず、皐月にとっては至福のひとときである。 コーヒーをひと口すすり、ケーキにフォークを入れ口に運ぶと、ほんのりと紅茶の香りが鼻をかすめた。 やっとまた今日も、長い1日が終わったのだ。 皐月はここでようやく、そう感じることができた。
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