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      青山皐月は、高校卒業後大学(文学部)へ進学し、一流企業へ就職した。 読書が好きという短絡的な理由で文学部を選び、大したことも身に付かぬまま卒業してしまった。 しかし幸運なことに就職試験に合格、一流企業への入社が決まり、事務の業務に配属が決定した。 両親を幼少期に亡くし、田舎の祖父母に育てられたが、現在仕事のため都会で1人暮らしをしている。 ほぼ1日中書類と向き合っていることが多く、人とコミュニケーションをとる時間があまりない職場だが、それはかえって皐月にとって有り難いことでもあった。 皐月は元々、人と話したり一緒に作業をすることが苦手だった。 無言になると嫌われたかもしれないと気を遣い過剰に喋ってみたり、少し冷たくされれば嫌われたと落ち込んでみたり。 人と接することで気を遣い、いちいち傷つく自分が嫌になったのはとうの昔。 それはもちろん現在も継続中なわけで。 そんなこんなで、皐月が自然体でいられるのは、仕事が終わり1人でこのカフェに訪れ、美味しいコーヒーとケーキを口にして、眠りにつくまでの間ということになる。
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