STAGE1

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 アルフォンスは、呆れた声音でそう漏らしながらも、エドワードに向かって素直に自らの鎧の腕を伸ばした。  エドワードは、自分に向かって伸ばされたアルフォンスの腕に太陽の熱により熱いくらいに火照った頬をピッタリとくっ付け。   「はぁ~、冷たくて気持ちイイ…」    小さな声音でそう漏らした。  夏と違い、春という気候の所為か。  ヒンヤリと冷たい金属がゆっくりとではあるが、確実にエドワードの熱を奪っていく。  アルフォンスは、自分の腕に頬をくっつけ笑みを浮かべるエドワードの姿に苦笑いを漏らしながら。   「兄さん」 「ん?」 「僕のじゃなくて自分の腕でやった方が楽じゃない?」    そう問い掛けた。   「――…」 「兄さん?」 「―――いいんだよ!アルの腕の方が冷たくて気持ちイイんだから!」 「そ、そう…かな?」 「そうなんだ!」    エドワードは、アルフォンスの問いに先程までの笑みを不貞腐れたモノへと変え、少しだけ熱の冷めた頬をあるフォンスの腕から放すと、久々に帰ってきたイーストシティを見渡した。   「久々だね。兄さん」 「ん?あぁ、そうだな」 「大佐達元気にしてるかな?」 「さぁ~な、でも、そう簡単にくたばるような連中じゃないからな」 「あはは、それもそうだね」    あんまりと言えばあんまりな兄弟の掛け合い。  だが、その言葉の中には、相手に対する絶対的な信頼が含まれていた。  母と共に帰るべき家を失った。  いや、自ら過去を断ち切った彼ら2人の兄弟に取って、今では此処が。  このイーストシティが、第二の故郷とも呼べる場所へとなりつつあった。
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