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新緑芽吹く春。
心地よい風が人々の間をダンスでもするかのように軽やかに通り抜けていく。
眩しいくらいに燦々と照りつける太陽の日差しが暖かな熱と涼しい影を作り上げていた。
「―――あっちぃ~…」
エドワードは、そんな眩しい日差しから目元を庇うように手を翳しながらそう漏らし、稀有な金の大きな瞳を細めた。
「兄さん」
「ん、何だアル?」
鎧の精神だけを定着させた事によりエドワードの感じている暑さを。
いや、人が感じる五感の全てを感じる事が出来ないアルフォンスは、兄の額に浮かび上がる汗を見詰めながら。
「そんなに暑いんだったらコート脱げばいいのに…、何で脱ごうとしないの?」
呆れた声音でそう問い掛けた。
「―――…」
「兄さん?」
「別に俺の勝手だろう!?」
「そ、そりゃ、そうだけど…」
エドワードは、自分の態度に納得出来ないとばかりのアルフォンスの返事に、ちょっとだけムッとした表情を作ると。
「アル!」
「な、何?」
「腕!」
腕を出すよう命令したのだった。
「――…」
「アル!」
「―――はいはい。ったく、兄さんはどうしてそうなんだろうね」
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