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―――東方司令部。
多発するテロにより、建築されて間もないにも関わらず、随分と古びてしまった建物。
エドワードが、そんな司令部を見上げるように立ち止まった瞬間。
「兄さん!」
自らの後ろを歩いていたアルフォンスの声に。
何かに気付いたかのような声音での呼び掛けに振り返った。
「ん、どうしたアル?」
表情の見えない。
――否。
表情を作る事の出来ない自分の鎧の顔を覗き込みながら、問い掛けてくるエドワードの視線を受け止めたアルフォンスは、いつもと変らぬ口調で。
「そう言えば、まだ今日の宿取ってなかったよね?」
そう問い掛けた。
「ん?あぁ、そう言えばそうだったな。…っと、司令部行く前に宿取っといた方がいいよな?」
「そうだね。じゃ、僕が先に行って予約してくるから!」
「―――え?」
「ほら、兄さんの報告って、今回も長くなるだろう?」
「うっ…」
「だから、僕が先に行って宿を取っておいた方がいいかなって」
「そ、そりゃ~…。今までサボってまともに連絡してなかった事もついでにして来ようとは思ってたけど…」
「ね、だから僕が先に部屋の確保をしておくから!」
「そ、そうか?」
「うん。だから、兄さんはしっかり大佐に報告してきてね」
「――あ、あぁ」
「それじゃ、後でね」
エドワードは、楽しげな声音でそう言いながら宿屋に向かって走り出したアルフォンスの大きな背中を見送ると。
「よし!それじゃ、めんどいけど俺も行ってくるかな!」
自らに軽く気合を入れ、ゆっくりとした足取りで司令部の階段を上って行くのだった。
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