序章

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「―――特に最近の瑛梨菜さんは、何かつらそうだし」 佐々木が声を落として言う。気にしていないつもりだったけれど、もうすぐアレから五年だ。 だから、あんな夢まで見たのかもしれない。 にしても、佐々木に心配されるなんて、私もまだまだだな。 「心配してくれるのは嬉しいけど、来週はどっちにしろ用事があるから」 「用事?」 「実家に帰るの、1週間」 佐々木が驚いた顔をする。無理もない。1週間も休みをとるなんて、うちの会社では考えられないことだ。 「なんでそんな―――」 「ちょっと、ね」 私は肩をすくめて、目の前のパソコンを眺めた。 居眠りしていた分、仕事に集中しなければ。 「じゃあ………手伝いますよ!」 私の隣りに座ろうとした佐々木を、私は手で制した。 「あんたは自分の仕事があるでしょ!戻りなさい」 「もう終わりましたっ」 「じゃあ、もう時間もすぎてるんだし、帰りなさい」 いつものように言ったはずだったけれど、佐々木は黙ってそこから動かない。 「佐々木…………?」
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