序章

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思い詰めたような表情で、佐々木が言った。 「俺じゃ、駄目ですか?」 まるでドラマや映画のワンシーンのようなコテコテの台詞だった。 でも、はっきりと佐々木は言った。 「ねぇ………佐々木、今いくつだっけ?」 「え?21歳です………けど」 拍子抜けしたような、佐々木の声がおかしくて私は笑った。 「な、なんで笑うんですか!俺、真面目に言ったのに」 「ごめんごめん、なんかかわいくてさ」 褒めたつもりだったけれど、佐々木はむすっとして言った。 「やっぱり、五個も下はダメですか?」 「そんなこと、ないよ」 五個下か。五年前の私だったら、きっと佐々木の気持ちを受け止めれていたかもしれない。 ちゃんと向き合っていけたかもしれない。 それに佐々木は、麦にどことなく似ている。 ―――だから、なるべく避けていたのに。 「年齢なんて関係ないよ。でも、私は駄目だよ」 ゆっくりと言った。 うちの会社には、もっと可愛くて素敵な子が沢山いる。 「どうして―――」 「今の私は、佐々木の気持ちに向き合えないから」
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