序章

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2人に会うのは、もう何年ぶりだろうか。 五年前の事があってから、なんとなく会うのを避けていたのだけれど。 「本当に久しぶりだね」 香代子が言った。 「みんな仕事はじめてから、予定あわなかったもんね」 言い訳だ、と思いながら私は言った。 「にしても、瑛梨菜が真面目に仕事してるとこなんて想像つかないよなー」 「本当にねー」 「バリバリ働いてますから!」 「うわ、信じられねー」 ああ、やっぱり昔からの仲間は安心する。 こうやって、馬鹿みたいな事を喋って、笑って。 「もうすぐつくね」 「うん」 「あ、健二が迎えにきてくれるんだよね」 「そうそう、健二、元気かな~」 今回の帰省の目的は、久しぶりに高校の部活の皆で集まること。………それだけではないのだけれど。 勿論、健二もその1人だ。 五年前に会った時は、仕事きついきついって弱音吐いてたけど、今はどうしてるんだろう。 「本当にもうすぐ………だね」 香代子が窓の外を眺めた。見慣れた田んぼだらけの景色が移っている。 本当に田んぼぐらいしかない、小さな田舎町。 私達が生まれ育った町まで、後少しだ。
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