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大手電子機器メーカーＧＵＩＬＤ。
それが、件の掲示板を管理する法人の名だった。
ＧＵＩＬＤは昨今における電子機器の発展と普及を第一線で引っ張ってきた会社であり、世界的にも有名な会社でもあった。
そしてスーツの男自身、ＧＵＩＬＤに所属する人間だからこそ、社員もしくは特別会員のみ利用が可能なＢＢＳを信用していたという訳なのだが、
――それにしても解せない。
――確かに情報通り出現はしたが、手応えが無さすぎる。
事例三件が、三件とも。全て一撃の下に結末を迎えていた。
――まさか、情報操作が介入しているとでも……？
様々な可能性が渦を巻く。
が、男はすぐさまその考えを抹消した。
何故ならば虚偽の記載は重大な規約違反だからである。
規約違反を犯した者は強制退会を余儀なくされるほか、法的な処置も下されるようで、悪ふざけをするにしてはペナルティーが重すぎる。
何よりメリットが無い。
――《マ王》、か。
――ただの幻影かもしれない。
いくら思考しても、尤もらしい言い訳すら浮かばない。
ひとしきり脳を回転させた男は溜め息一つ洩らし、携帯端末を再びタッチ。
アドレス帳を展開すると《ジュリア》との表示。
通話の項目をタッチして耳に当てた。
――電子音がループする――
＊
天を衝く摩天楼が夜の闇に浮かぶ。
無数のそれに端々を侵食された満月が、まるで無関係と言わんばかりに煌々と輝く。
上空を彩る二ツの存在は何時もの街の風景だった。
――■■が現れるまでは。
煌めく満月を虫喰う影が現れるまでは――
この日、空を分かつ存在は、二ツから三ツへと勢力を変えた。
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