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――ループする電子音は五度目に差し掛かったところで唐突に途切れた――
『はいはいはいはい。おまたせおまたせ。どちら様?』
受話口から放たれる気の抜けた女の声が、男の聴覚を刺激する。
――画面確認もしないのか。
普段はオフィスに籠もりっきりのハードデスクワーカーであるため、機械には滅法強いはずなのだが。
一体、何のための登録機能なのか、と男は若干うんざりした表情で口を開く。
「ああ、すまない。私だ。サージタリウスだ」
『はいはい佐山ちゃんね。お疲れ様』
「その名で呼ぶな。今は違う」
『あーそうだったね。はいはいごめんなさいごめんなさい。で? どしたの?』
ジュリアの軽口に、更にうんざりするスーツの男ことサージタリウス。
一々口出ししていては前に進まない事を思い出し、割り切って言葉を紡ぐ。
「ああ、ミッションが終わったものでな」
『そう。戻るの?』
「いや、少し気になる事がある。そこで頼みたい事があるんだが、喜べ。お前の得意な検索の時間だ――」
*
裏通りから少し離れた大通り。
片側二車線の道路を車が埋め尽くす。
歩道と車道が入り混じる交差点は、行き交う人々でざわめくスクランブル。
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