序 章 疾風迅雷/マ王降臨

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       * 『――なるほど。つまり、過去ログを漁って欲しいってワケね』  サージタリウスの話を聞いたジュリアは、いつもの間延びした様子でそう言った。 「そうなるな。出来るか?」 『愚問ね。もう始めてる。二分頂戴ねー』  受話口からキーボードをリズミカルに叩く音がする。  止まることのない音はジュリアの独り言と重なって加速。  こんな時だけは頼りになるな、とサージタリウスは音を聞きながら思った。 ――さて、こちらはこちらで飛び散った肉片を集めなくては。  携帯端末は通話状態のまま、ワイヤレスイヤホンを接続してポケットにしまう。  電波は良好。  音声クリア。  コネクティングに異常は無し。  サージタリウスはこれまでの案件を思い出しながら、心の中で反復する。 ――まず、一度目のミッションでは何も残らなかった。 ――二度目のミッションでは、飛散した肉片が数秒経たずに蒸発した。 ――そして三度目は、  ネチャリ、と粘り気のある感触が指先に走った。  血液特有の鉄臭さが鼻孔に広がる。  僅かに眉を寄せるサージタリウスであったが、仕事柄、こういった事には耐性を持ち合わせているので嘔吐する事はない。ただ、お世辞にも気持ちの良いものではなかった。
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