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『――なるほど。つまり、過去ログを漁って欲しいってワケね』
サージタリウスの話を聞いたジュリアは、いつもの間延びした様子でそう言った。
「そうなるな。出来るか?」
『愚問ね。もう始めてる。二分頂戴ねー』
受話口からキーボードをリズミカルに叩く音がする。
止まることのない音はジュリアの独り言と重なって加速。
こんな時だけは頼りになるな、とサージタリウスは音を聞きながら思った。
――さて、こちらはこちらで飛び散った肉片を集めなくては。
携帯端末は通話状態のまま、ワイヤレスイヤホンを接続してポケットにしまう。
電波は良好。
音声クリア。
コネクティングに異常は無し。
サージタリウスはこれまでの案件を思い出しながら、心の中で反復する。
――まず、一度目のミッションでは何も残らなかった。
――二度目のミッションでは、飛散した肉片が数秒経たずに蒸発した。
――そして三度目は、
ネチャリ、と粘り気のある感触が指先に走った。
血液特有の鉄臭さが鼻孔に広がる。
僅かに眉を寄せるサージタリウスであったが、仕事柄、こういった事には耐性を持ち合わせているので嘔吐する事はない。ただ、お世辞にも気持ちの良いものではなかった。
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