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「最悪。最低、死んじゃえ」
私は、今腹が立って仕方がない。
膝かっくん、なんて可愛い言葉で済まない位強く膝蹴りされたのだ。
きっと痣になる。
「あはー?大丈夫?
こんな何もない所で転んじゃうなんて相変わらずドジなんだねぇ」
そう言って、むかつきの元凶が無邪気に笑ってこっちを見て手を差し伸ばす。その無邪気な笑顔が更に気に入らない。私の知っている紀一はこんなに可愛いらしい語尾じゃないし、こんな可愛いくって犬みたいに愛想を振り撒かない。
むしろその逆で悪態をついて平気で指を刺して嘲り笑うような奴だ。
「…最悪、死ね。死んじゃえ」
膝の奥がまだジンジンと痺れている。
回し蹴りか何かしたんじゃないかと疑ってしまう位痛い。
私はやっとの事で立ち上がった。
紀一は少し開いた目で小馬鹿にしたように笑うと差し出した手を引っ込めた。
「んもー、昔っから口悪いんだからー
女の子はもっとお淑やかにしなきゃ」
どの口が言うんだか。
私は呆れてしまう、こんな気色の悪い紀一に会いにきた訳じゃない。
そう、兄に言われた資料を持って行かなきゃならないのだ。こんな奴相手にしてらんない。
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