幽霊クロ(仮名)の場合

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それはさておき、例の女の子を探す。その子はすぐに見つかった。猫に餌をあげている。野良猫だろうか? 「爺、食べないとダメだよ」 少女は言う。 猫に爺って名付けたのか?ネーミングセンスの無さは、どっかの自称天使に負けず劣らずだ。 「この猫どうしたんだ?」近くまで行き、少女に後ろから話しかける。 「ああ、あんたまだいたんだ。爺は私を助けてくれたんだ、だから私もお礼に食べ物を持ってきてるの」 猫の恩返しならぬヒトの恩返しか… 別に馬鹿にしているわけじゃない。 「そっか」 俺は答える。他人を詮索するのは嫌いだから、経緯は聞かない。 でも、それは道徳的には素晴らしいことなんだろうな。 「あんた幽霊でしょ?私、前から一度でいいから見たかったんだ。授業中はありがとね。私予習の範囲間違えてて、普段はあんなことないんだけど…」 そう、俺はこの子を助けた。マギの言う人助けの仕事は終わったはずだ。 俺は少女に言う。 「別に、いいんだ。幽霊は生きてる人間助けるのが仕事らしいから」 きっぱり言う。マギがさっき言ったような、他意はない。 「そうなんだ。じゃあもう何処か他所に行くんだ?」 聞かれても困る。 「それは俺にもわからない」 マギに聞こうか… 「マギ、俺はこのあとどうなる?」 「無事にアルカディアに私が送り届けます。生きた人間の感謝の心があなたを導いてくれます」 なんか宗教のキャッチコピーみたい 「マギさんって人もそこにいるの?私には見えないけど」 どうやらマギは幽霊がみえる人間にも見えないんだろうな。 「私たちは、肉体を持つものには見えません」 マギは答える。 「君には見えないんだってさ。マギは自称天使なんだ」 少女に言う。 「幽霊に自称天使か…珍しい組み合わせだね」 少女は楽しそうに言う。 この子は電波さんなんだろうか? 「そろそろ、連れていきますが、よろしいですか?」マギが言う。 それを聞いて、少女にこう言う 「これでお別れだ。もう二度と会えないけれど、元気でな」 一応、少女は依頼主だし、挨拶くらいはしておきたい。 「来世で会おうね」 少女は言う。 やっぱり今が青春のはずなのに、来世なんて縁起でもないことを口にするなんて、電波さんにちがいない。 そして俺とマギを光が包み込む。
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