5人が本棚に入れています
本棚に追加
山手線の電車を何本見送っただろう
誠はホームのベンチに座りこれからの事を考えていた
……どうすっかな 何て言い訳しよう…
社の半期分の売上になり得た契約を落とした
自分の書類も見積も契約を勝ちとった側より完全に劣っているのは明らかだった
あ~っ 頭をかきむしっていた
通りすがりの人が不信そうにジロジロ眺めている
『お兄ちゃん…つらい事あったの?』
少女が誠の顔を覗きこんでいた
…ああ 仕事でミスってねどうしようか考えていたんだょ……誠は苦笑いしながら少女の問いかけに応えた
……つい、死んじゃいたいって思っちゃったよ
死んでどうなるって事でもないのにな……
誠は聞かれるとは無しに喋り続けた
『お兄ちゃんのつらい思い出…食べてあげるよ』
……え?
そう言うと少女は誠の額に手をあてた
プランニングの席…。
賛辞の拍手…。
満足そうに説明を終えた誠の姿……。
悔しそうな競合相手のプランナー……。
逆のシチュエーション?!
はっ!
と気づいた時にはもうさっきまでのどうしょうもない胸のつかえ 虚脱感は嘘のように消えていた
『おにいちゃん…もう大丈夫………行こう』
少女は誠の手をとった
あぁ ありがとう…なんだかやり直せそうな気がしてきた
社に戻るよ…
少女は誠の手をとりホームへ歩き始めた
~山手線内回り~電車が参ります
放送が終わらない内に激しい急ブレーキの音
悲鳴があがる
人だかり
さっきまでつないでいた手が線路にボトリと投げ出されている
『お兄ちゃん…つい 死んじゃいたくなるんだね……でもね最初から決まっていたの……』
少女は 手を見つめていた
最初のコメントを投稿しよう!